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迷惑な遺伝子/シャロン・モレアム

また進化の話の本を読みました。

進化論を考えるときについつい我々がやってしまいがちなのが、進化を目的論的に捕らえてしまうことです。つまり、「キリンは高いところの葉を食べる為に首が長くなった」と考えることです。そうではなくて、単に首の長いキリンと短いキリンでは長いキリンのほうがたまたま少しだけ生存率が高かったということに過ぎないのが正解です。どこが違うのかと思う人もいるでしょうが、この自然淘汰の考え方と、環境から生物に加わる「淘汰圧」を理解することで、わかっているつもりだった進化論なのに、新鮮な視点を得られたりするわけです。

さて、人間だって進化の果てに今のような生物になったわけですし、今でも人間の進化は続いています。特に、環境の変化により大きな淘汰圧がかかることにより、人間の遺伝子プールに短期間に大きな影響を与えることがあります。

さて、この本のサブタイトルは「病気の遺伝子はどこから来たのか」とついています。今ではさまざまな遺伝病が知られていますが、なぜ病気になる遺伝子が進化の過程でこれほど広く受け継がれているんでしょうか。

それはもちろん、その遺伝子があったほうが生存に有利なことがあるからです。

この本の中には数多くの驚くべき知見が含まれていますが、その中でも普通の人も食いつきのよさそうな話をひとつ紹介します。

糖尿病になりやすい遺伝形質があるというのは、最近はかなり知られています。様々な複合的な要因で発病するかどうかが決まるようだとわかってきています(もちろん、肥満もその要因のひとつです>_<)。しかし、なぜこのような命に関わるような病気が淘汰されてしまわなかったのでしょう。血糖値が高いことによって人間はどんなメリットを受ける可能性があるでしょうか。

実は、氷河期の後、人類は極端な寒冷化の時代に遭遇したことがわかっています。そして、それこそ「血も凍る」ような寒さの中、インシュリンを作れなくなり血糖値が上がってしまった人の血液は、いわば「不凍液」としての働きをしたのではないかというのが、この本の説です。つまり、中年になってから糖尿病で早死にしようが、凍死するよりはよっぽどマシだったわけです。そもそも、子孫を残してからなる病気による淘汰圧は大きくないに決まってます。人類の一部は糖尿病の遺伝子を手に入れることによって生存の確率を高めたのです。ちなみに、ご想像通り、糖尿病のアフリカ人はほとんどいないんだそうです。

こんな話がいくつも出ています。この話は何万年か前の人類の進化の話ですが、別の話では中世のコレラの大流行がある遺伝病の遺伝子を生き残らせる淘汰圧になったという話が出てきます。コレラの大流行のような大量の人類を殺してしまうような、強い淘汰圧がかかった場合、人類の遺伝子プールに強い影響を残すということもわかっています。

とにかく、目からウロコが落ちる話がいくつもあること請け合いです。興味があるかたは是非、読んでみてください。

ちなみに、この本によると、白人が強い紫外線の環境に晒される、あるいは黒人が北欧のような日光の弱い場所に移動した場合、体色が変化するのに1000年程度しかかからないんだそうです。進化って意外に早いスピードで起きるんですね

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