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ばいばい、アース/冲方 丁

冲方丁はもちろん名前は知っていて、「マルドゥック」なんかも読んではみたいなーと思いつつ未読なんですが、最近文庫化された「ばいばい、アース」があちらこちらの書評ブログで大絶賛なのでこれを読んでみました。

こりゃ、すげえ

なんというんでしょうか。平べったい箱の中に、割とメタルでとげとげしたオモチャをごちゃっと盛って、むりやりに押し込めたような迫力があります。「マルドゥック」でSF大賞を取っている作者で、タイトルもなんだか出涸らしのSF短編みたいですが、内容はファンタジー。いや、ベースはそのタイトルから想像されるとおりのSF話なんです。

地球からエクソダスした人類が移住しようとした月の一都市。本当の人類は長らくカプセルに入れられていた主人公しか残っておらず、その人間が不自由なく過ごせるためのロボットやミュータントが独自の街を形成しているが、いつの頃からか、彼らも自我を持ち始め・・・

・・・なんて話を形だけ生かして、その上にファンタジー的異世界を構築しちゃってます。その異世界もまるで「十二国記」ぐらいのテンションで作り上げてます。「花」と書いて「とり」と読ませる奇想天外な生き物、木に実のようになる剣を持って悪と戦い糧をなす剣士達。正義と悪の作られた対立。そして、表れる<理の少女>。

第一巻の半ばまではその独特の世界観に慣れていくまでかなり戸惑いますが、主人公ラブラック=ベルが初めて楽隊に参加して戦闘に趣くくだりから猛烈に面白くなっていきます。そのストーリーの展開も見事ですが、この読ませる力は作者生来のものでじっくりと構成され企まれたそれではないようで、作者には何か書かずにはいられない情念のようなものがあり、それが強い力で物語をひっぱっている事がわかります。そのことが、世界をも作りこまれた感じではないごつごつ感があるものに仕立てています。また、そのために作った世界での独特の規則の名付け方が、世界観の深みも感じさせると同時に、作者の遊び心も感じさせる、何とも絶妙です。

それにしても<排泄魔法>と書いて「レスト・ルーム」って読ませる闇の軍団がいて、それはかなりおどろおどろしい描写でと共に表れて主人公達と対峙するわけです。その闇の軍団が

LET IT O
LET IT O
LET IT O

と、唱えながら進軍してきます。なかなか、迫力のあるシーンなんですが、よく見るとこれって「トイレット」のアナグラムなんですね。みんな便所に行きたくて侵攻してきたのかと思うとちと可笑しい(笑)

まあ、とにかく混沌としてて、ごつごつしてて、生き生きとして、溌剌として、どろどろして、魅力ある小説です。果てしなく長いですけどこれは是非、オススメです。

あ、最後に文庫版の表紙について。こんなごつごつした小説にラノベのような表紙が付いたことには議論があるというような記述をWikipediaでみました。でも、この表紙、好きです。キム・ヒョンテさんという韓国人のイラストレーターらしいです。日本のアニメ・ゲームの影響を色濃く受けていながら(特に村田蓮爾さんを思い起こさせますね)、日本の萌え絵とは違うところへ行っています。この人の個性なのか、お国柄なのかはよくわからないですけど。でも、なんというか、セクシーでむらむらっとくる、すごくいいイラストだと思いますよ。

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