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November 02, 2007

岡田斗司夫の「遺言」 つづき

つづきです。おぼろげな記憶を元に書いているので、間違っていたら教えてくださいね。

愛国戦隊 大日本

観たことない人、居る?あ、みんな観たことはあるのね

いや、みんな観たことあるんだ。それはそれですごいと思うんですが(笑)

これは、楽しいパロディをやろうという意図で、毎日、大阪城公園に通って、楽しかった。楽しくないわけないよね

楽しかったけど、DAICON3やDAICON4の様な本気はなくて、得るものがないっていえば、ない。ただ、スケジュールをちゃんと決めて作品を作り上げたことは大きな自信になったし、ミニチュアや合成の技術は身についた。

そういえば、黒色火薬っていう技術革新があった。百科事典に作り方が書いてあって、薬局に行って薬品を買ってその通りに作ったら出来た。火薬というのは、混ぜただけでは爆発しないんだよ。ただ混ぜると、そのまま自然に発火して燃えていく。燃えにくくするものを混ぜて、圧縮しないといけない。それで、アルミ缶に入れて、踏んで固める。

良く踏めば踏むだけ点火したときにいい爆発をするんだけど、もしかしたら、次踏むと今、爆発するかもしれない。怖いんだ、コレが(笑)

これはネタがネタだけに多方面から怒られたけど、宮崎駿がこれを気に入ってスカウトに来た。宮さん、どこが気に入ったんだろうねえ。

宮崎駿さんは、アニメーター集めて労働運動やっちゃうような人だというのは、この客席に居る人たちの基礎知識(笑)

宮崎さんがその時に進めていたのが「アンカー」という企画で、何か理由があって代々ある女の子守るっていう話。やっぱり、女の子なんだけど、この女の子が全然、美少女ではなくてこまっしゃくれた守りたくなさそうな感じ。当時、みんなに声をかけていたらしく、夢枕獏も押井守も誘われたって後から聞いた。

帰ってきたウルトラマン

もともと、庵野君が下宿でジャージを着た男ととっくみあいをする「ウルトラマン」というショートフィルムがあって、それの続編だから「帰ってきたウルトラマン」

オープニングの映像の、ほぼすべてが紙。紙は太陽光の下で撮影すると紙に見えない。この当時、紙があれば何でも作れるって言ってた。

「大日本」を作って、もうただのパロディではおもしろがれないことがわかった。

この作品には、まず第1のレベルとして、素人でもすげえ特撮をやってやるぜ、びっくりしろというのがある。そして、第2のレベルとして、超絶ミニチュアとどシリアスなドラマ、その上で、素顔の庵野秀明がウルトラマンとして出てくる落差で台無しーというネタがある。そして、更にその上のレベルとして、たとえ、素顔の庵野君のウルトラマンでとっちらけー・・・だとしても、それでも最後にはいい話だねえと思える。嘘っぱちでも、我々は物語に感動できるし、だから、嘘だから価値がないってことじゃないよねという問いかけがある。

でもこれ、言っちゃえば「大日本人」だよな。これを全く照れることなく、笑いに持っていくことなく演じきる庵野はすごいよ(笑)

そういえば、GONZOは「電車男」でDAICON IVのパロディをやってたけど、なんの志もなくてがっかりだった。GONZO駄目になったな!

DAICON FILM 混迷の時代

DAICON4の後、DAICON FILMは次に何を作るかで混迷する。

赤井さんが「八岐之大蛇の逆襲」で真っ当に怪獣映画を作ろうとしてた。

その一方で、二つの企画を進めていた。1つが「大正スターウォーズ」で、もう一つが「出稼ぎ巨人」

「大正スターウォーズ」は、スターウォーズが大好きなSFファンが、大正時代にタイムスリップして、そこでものすごいお金持ちのパトロンに拾われ、その時代でスターウォーズを作ろうとする話。

なんせ、フィルム・・・どころか、ベースとなるセルロイドから作らなきゃいけない(笑)。特撮ではもう「スターウォーズ」には勝てないという気持ちや、先輩SFファンに美味しいところは全部取られちゃったという感覚がモチーフになっている。

「出稼ぎ巨人」は、後に「王立宇宙軍」に繋がるアイデアで、巨人の国の食い詰めた若者がスカウトされて小人の国で戦争をする話。ハリボテを着込んで小人の国の新兵器として出て行く。

DAICON FILM内のプレゼン合戦で「八岐之大蛇」に負けたので、山賀と二人で、「王立」を持って外へ打って出ることにする。そして、「王立」はバンダイというパートナーを見つけることになる。

王立宇宙軍 オネアミスの翼

実は私、まだ王立観てないんです。どうも、気が進まなくて・・・

最初期のプロット

双子の兄と弟がいる。弟の方が優秀なのだが、弟は兄を大学に行かせるのが夢で、そのために軍隊に入り、兄の学費を作る。そのお陰で兄は大学に行けるのだが、成績はイマイチ。エリートの空軍ではなく、落ちこぼれの宇宙軍にしか入れない。弟は生来の優秀さのために、軍の中でどんどん出世していく。そのせいで気まずくなる二人の関係。弟の心は度重なる戦闘で荒み、軍を抜けて傭兵暮らしに身をやつす。しかし、自分には誇るべき兄が居たことだけは、忘れずにいる。

しかし、落ちこぼれで役に立たない宇宙軍に有人宇宙飛行計画が持ち上がる。その計画に志願する気力もなく、日々を腐ってすごしていた兄だったが、結局はいろいろあって(?)宇宙飛行士になる。

打ち上げの日、打ち上げを阻止しようと戦闘を仕掛けてくる敵対勢力。その中に、傭兵として雇われている弟の姿があった。もちろん、兄がロケットに乗っていることは知るべくもない。激しい地上戦のさなか、ロケットは無事に打ち上がる。軌道上から、兄は全世界にラジオを通じてメッセージを伝える。

「ここから地上を観れば、戦争なんてしなくていいんだと思う」

「いい気なもんだな」と休息中の弟はラジオに向かってつぶやいて、また戦闘に戻っていく。

格好いいけど、売れなさそう・・・

解題

兄は、親兄弟や仲間を残して東京に出てきてアニメをつくっている自分たち。弟は、アマチュア製作集団から卒業して就職して行った元仲間達。

そうまでして、東京に出てきたのに・・・という自分たちに対するふがいなさや、仮に、自分たちの作品を世に出せて、それに自分たちの感情やメッセージを載せて送ったとしても、昔の仲間は観てくれないかもしれないし、観ても、自分たちの思いは伝わらないかもしれない・・・というのがモチーフ。

ストーリーの変遷

バンダイの社長には、「よくわからん」と言われてしまった。

自分としても、「これ、2時間で収まるのか?」という問題はあった。

山賀は、「何か足りない」と言う。「ナウシカが足りない」

ナウシカへの思い

当時、やはり「風の谷のナウシカ」には衝撃を受けた。間違いなくすごいアニメで、ナウシカは素晴らしく憧れる気持ちもあるが、それと共にナウシカのエコロジー思想的なテーマには納得出来ないものがある。しかし、もし、ナウシカがなかったら、ここまでやろうと思わなかったかもしれない。

そういうもやもやしたナウシカに対する愛憎半ばする気持ちを入れたいと山賀は言った。その気持ちは、ひょっとしたらものすごく可愛い女の子に宗教の勧誘を受けたような気持ちに近いんじゃないだろうかということでリイクニというキャラクターが登場した。

予告編 初期

イメージボードと、多少動く絵も出来ている段階で、でもまだ、キャラクターなんかが決まり切っていないときのプロモーションフィルム。スタッフが若いせいか、キャラの演技が決まりすぎてて不自然なんだよね。

もう1パターン。歌モノもいいだろうと言うことで。(この曲が何だったか、Tambourineは知りません。ご存じの方、教えて)。これが合うんだ・・・って、自分でMAD作っててどうするんだか。でも、これもちゃんと予算使ってダビングしてフィルムを作った。バンダイの人には怒られた。最後にサービスでバンダイのロゴを入れたら「誰が許可した!」と、もっと怒られた。僕と庵野はノリノリでこれがイチオシだったのに、山賀には「だめに決まってるじゃん」と言われた。

予告編 リイクニの翼

「リイクニの翼」。やなのがついちゃったよ。

このサブタイトルがつくことには、非常に不満だった。今でも悔しい。
このタイトルがつくことによってリイクニが正しいというバイアスが
かかってしまう。観客にはバイアスのない状態で観て欲しかった。
しかし、このサブタイトルがなければこの映画が公開できなかったのも確か。

こうやって、この頃はいつもバンダイの人と闘っていた。
自分の作品を守るため、そうするしかなかった。
結果として、会社と僕らの間で板挟みになったバンダイの担当者は
鬱病になり、この後、田舎での療養生活を余儀なくされる。

反省はない。でも、後悔はある。あの時、なぜバンダイを敵と考えて
しまったのだろう。もっと大人になれなかったんだろう。
作品が完成した後は、クライアントとは当たれば一緒に肩を叩いて喜び
コケたら一緒に泣く仲間になることはわかっているんだけど、
その仲間を敵と考えて、結果的に裏切ることは、やっぱりよくないこと。

この事を考えると、いつももっとうまくできたんじゃないかとも思うし、
いや、あの時の自分にはああしかできなかったとも思う。
簡単に語れるようなことじゃない。アニメ夜話で「王立」をやった回は
もっと言いたいことがいろいろあったし、でも、うまく言えなくて苦しくて
途中からは「恥ずかしい」ということにして、逃げたんだ。

この辺りは、聞いていて身につまされます。システム開発の現場も全く同じです。20代、30代で3億、4億のお金を左右するようなところで板挟みになったら、みんな壊れちゃいます。いっぱい見たよ、そんな人・・・。私も毎回プロジェクトをやる度に、「もっと出来たんじゃないか。違うやり方があったんじゃないか」と自問自答します。

樋口真嗣バージョン

タイトルが最終的に「オネアミスの翼」になった。妥協の産物。

樋口くんが作ってくれてすごく格好いいんだけど、「情緒的すぎる」ということでボツに。これ以後、「ガイナックスは予告編を作ってはならぬ」ということで東宝東和が担当することになる。

最終版

東宝東和というのは、柳の下のドジョウの味をよく知っている会社でよく言えば、プロ。悪く言うと・・・なんだろう?やっぱり、プロ(笑)

そんな東宝東和は、とにかく予告編でこの映画を「ナウシカみたい」に見せることを考えている。本気で「ムシは出せないか」と言ってくる。挙げ句、「3カットでいいから」と。信じられない。3カットだけ出してどうするんだろう。

でも、それで方々丸く収まるならという気持ちも出てきちゃう。横で庵野はなぜか嬉しそうな顔をして、「どうしますか?山賀さんさえアリなら、描きまっせ」と言う。見ると、手が動き出してもうデザイン検討しそうになってる(笑)。さすがに山賀は×を出したけどね。

ある日、現場で貞本の机を見ると何かムシの絵を描いてる。聞くと、「東宝東和から発注ありましたよ」と言う。思わず怒鳴る。この時期に貞本にそんな仕事させるなと。そんな絵を描いてる間に何カットかでも直せる。そんな暇があったら、そこの変な顔をしているリイクニをどうにかしてくれと。

とにかくいろんな事があって、「どうしよう。『オウリツ』より『ゲンヂツ』の方が面白いよ」と言ったら、山賀は笑ってくれなかったけどね。庵野は「ホントに(「ど根性ガエルの節で)『♪泣いて、笑って、ケンカして~♪』ですねえ」と言ってた。本当にそうだった。この映画が公開できたら死んでもいいと思ってた。

さて、東宝東和の予告。・・・もう笑うしかないよね。さすがに、これを試写室でみたときは笑った。最後の「愛の奇跡、信じますか?」の後に隣で見てた貞本はぼそっと「信じねえよ」って言った。

会場も、映像をみるなり苦笑・・・。岡田さんはすごく悔しそうでした。

まとめ

本当は、こういう製作上のゴタゴタも作品の中に埋め込んじゃいたかったけどさすがに入らなかった。とにかく、自分はこういう作品の作り方しかできない。それは、今に至るまでそう。大体、何を言われても腹も立たないけど、離婚の言い訳に「フロン」を書いたんだろうとか、金儲けを考えて「いつデブ」を書いたんだろうとか言われるのは違う。

何ヶ月もそれにかかり切りになるのに、もう少し高尚なテーマがないと、とても自分には作品を作り上げることは出来ないよ。

さて、パート2はいつになるのかな。トップの話、ナディアの話、聞きたいですよね。また、名古屋から(行けたら)行きます。

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Comments

面白く読ませて頂きました。

ありがとうございます。

Posted by: TS | November 02, 2007 at 05:03 PM

面白いっすね。じっくり読ませていただきました。

Posted by: | November 05, 2007 at 07:25 AM

>結果として、会社と僕らの間で板挟みになったバンダイの担当者は
>鬱病になり、この後、田舎での療養生活を余儀なくされる。
 ダメだよー、一番大事なところが抜けてる。
 この療養生活を余儀なくされた人は、その後復活して
バンダイビジュアル株式会社の取締役社長(今は専務取締役)
になり、株式会社エモーションの取締役社長やってる渡辺繁なんだから。
http://www.dot-anime.com/tb/tb_emodama/013.html

 その後何度もガイナックスをバンビジュが助けたのは、この人が
いたからこそ、なわけで。

Posted by: torov | February 25, 2008 at 10:31 PM

ほほー、なるほどなるほど。おもしろいっすね。コメントありがとうございます。

Posted by: Tambourine | February 26, 2008 at 08:09 AM

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